生活そのものが共生していない
最近の生活スタイルは、実は自然との共生がなくなり、異常にバランスが崩れてしまっているのだ。
日本の気候は多湿である。昔の木の家は、適度に水分を吸収し、乾燥すると放出してバランスが取れるようになっていた。家も呼吸をしていたのだ。部屋はほうきで掃き浄め、廊下や畳の拭き掃除も定期的に行われていた。
今の住宅は密閉状態にある。家そのものが湿度を調整することはなく、また、共働き家庭が増えているので、毎日掃除とはいかない。それだけ眼に見えないバイ菌やダニなどが繁殖しやすい状態にあるのだが、その反面、入浴などで使う石けんは抗菌・殺菌のものが増えている。身体を洗う行為そのものは問題がないらしいが、抗菌・殺菌しすぎると、皮膚の表面にある常在菌まで殺してしまうらしい。つまり、外から入ってくる細菌などの防御ができなくなるのだ。
それがアレルギーを引き起こしていることもあるそうだ。そして生まれてからずっと、抗菌・殺菌によって無菌状態にある子供は、結果として免疫ができないため、逆に自分自身を守れない身体になっているという。
戦前は、現在のような異常なまでのアレルギーはほとんどなかった。畳が含む適度な菌により生活空間の中で自然に免疫力ができ、自宅だけでなく地域なども、清潔で通気の良い環境が、人間と菌との適度な共生を生んできたというわけである。
目には見えないが、細菌と人間の関係にも共生があった過去の日本と、極端なまでに菌を殺しながら、反面繁殖しやすい環境をつくりその中で暮らしている現在の日本人。人間が自分たちに都合のよい屁理屈をつけて稼ごうとすればするほど、何かわからない深みにはまっているのが現実なのである。