世界に誇る日本人の長所
元ハワイ州知事のジョージ・アリヨシ氏は終戦直後に占領軍の将校として来日、昭和二十年暮れに有楽町の街角で7歳の瘠せた少年から靴みがきをしてもらった。寒風が吹きすさぶ中、少年は心をこめて一生懸命磨いてくれた。
感激した氏は進駐軍の食堂から持って来た、ジャムをたっぷり塗ったパンを少年にプレゼントした。少年は深く感謝しつつ、そのまま袋にしまいこんだ。なぜ食べないのか不思議に思った氏が訊ねたところ、少年は「家に3歳の妹がいるんです。」と答えた。アリヨシ氏は驚いた。着のみ着のままで満足に食べていない7歳の少年がパンを自分で食べずに妹に与えようとしている。
世界どこの国の7歳の子どもが自分が食べるのを我慢できるだろうか。日本人の精神は滅んでいない。日本は間違いなく復興するに違いない、氏はそう確信したという。
ウクライナの日本教育
ところで、世界にはそうした日本人の美点を今でも大事にしている国がある。その一例が、ウクライナだ。
ウクライナは、ロシアとポーランドなどに囲まれた小国だ。
そんな遠い国が、日本の伝統文化や日本精神に大変な関心を寄せているという。ウクライナの学校では、小学五年生に松尾芭蕉の俳句を、高校二年生に川端康成の「千羽鶴」を、それぞれ教える。
日本文学を通じて日本の伝統文化や日本人の心を教えるためだ。こうした高度な日本文化の教育を受けたウクライナの若者は、当然、日本人は礼儀正しく、倫理意識が高い廉潔な国民だと考え、日本という国家や日本国民 を心から尊敬するようになる。そうしたウクライナの人達が今の日本を、例えばローマで酩酊会見をした日本の政治家の現状を見てどう思っただろうか。まずは我々政治家が真摯に反省し、国民の皆さんに心からお詫びしなければならないと思う。
明るい日本のために
長い歳月をかけて培われてきた日本人の心や日本の伝統文化には世界の人たちも理解し共鳴できる普遍的な価値が含まれている。過日、映画「おくりびと」がアカデミー賞の外国語映画賞を受賞した。映画に描かれた死と向き合う日本の納棺師の心は日本人の心そのもので、宗教や文化の違いを超えて外国の人々の心を打ったのだろう。
今後の日本に必要なことは、日本の若者に日本の伝統文化や日本人の心を徹底して学んでもらうことだ。そして同時に外国の伝統文化などにも接してもらうことだ。日本の素晴らしさを感じ取り、学び取ることができる者こそが、異文化の価値を正しく理解できるのだ。そのためにはまずは政治が国民の信頼を回復してその先頭に立たなければならない。暗いニュースが相次ぐ日本だが、私は決して諦めることなく、明るい日本を作るべく全力で取り組んでいきたいと思っている。