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太平洋戦争の敗戦から64年、日本は世界中の教育関係学者・為政者が明治40年以来、尊敬して止まなかった教育勅語と修身教科書を否定し続けてきました。私は、国際比較教育学の立場から、国づくり人づくりをお手伝いしたく、この度の創刊号に教育勅語と修身教科書の成立の由来と、戦前・戦後の国際的評価の概略を紹介します。


英国も評価した教育勅語
教育勅語は明治23年に発布されました。その理由は、明治維新で文明開化の大波が押しかけて、西洋文化崇拝、日本古来の伝統文化否定で、日本社会全体が立ち行かなくなるほど道徳が退廃してしまったからです。(詳細は拙著「教育勅語絵巻物語」参照) 修身教科書は、明治37年に小学校一年生から六年生用まで発行されました。その内容は、年齢・学年に応じて道徳教育を具体的に理解できるように、親孝行・奉仕などの徳目を配列したものです。(詳細は拙著「道徳読本・日本と世界」参照)

明治40年2月、ロンドン大学で24回におよぶ「教育勅語」の大講演会が開催されました。英国政府の要請で、日本の文部省が総力を挙げて「英語教育勅語」を作成し、日本の歴史と伝統文化を紹介したものです。  

この講演をロンドンの新聞「スタンダード紙」は次のように論評しました。 「一旦緩急アレバ義勇公ニ奉ジとは天皇陛下が国民に告げ給いし教訓である。しかして国民が如何にうるわしく之を服膺せるかは日露戦争が明らかに証明している。(中略)実に日本国民は西洋人の理解不可能な方法を以って、教育の意義と其の目的とを解決することが出来たと云うべきである。もし日本人が物質方面において西洋の模擬者とするならば、西洋人は精神的方面において日本人の模擬者であることが其の利益となるものである」と。


「宝物」を放置している日本
明治41年9月25~28日、ロンドンで「第一回世界道徳教育会議」が開催されました。 サドラー会長は開会の辞において特別に、「愛国的義務と自我の徹底的抑制を厳格に教え込んでいる日本人の訓練における、道徳上の名声と偉大な伝統の力を理解するのに力になってくれる人が参加しております」と述べ、日本政府代表の出席を歓迎しました。  

北条時敬(広島大学学長)は「日本の諸学校における徳育」と題し、小学修身教科書に頻出する二宮尊徳や楠木正成などの例話に言及する演説を行いました。 また、英語教育勅語ばかりでなく、ドイツ語とフランス語と漢文の教育勅語も作成して参加国の代表に配布しました。  

このようにして、日本の教育勅語と修身教科書は世界中に広まり、以来100年間、戦前も戦中も戦後も、道徳教育の模範となっております。ところで、日本では教育勅語と修身教科書はどうなっているのでしょうか。  
敗戦直後の昭和20年12月31日、GHQ(マッカーサー占領軍)は、「修身・日本歴史および地理の授業停止」を発令しました。また、日本の衆議院と参議院は、昭和23年6月19日、「教育勅語の排除・失効決議」を満場一致で可決しました。現在もそのままです。 「日本の宝物」を放置するなんて情けない話です。